カテゴリ:2013年10月


16日 10月 2013
晴れの国、岡山に到着
10月13日~14日の2日間、岡山コンベンションセンターにて「第9回公益社団法人日本鍼灸師会全国大会inおかやま」が開催された。大会のテーマは『きぼう・・・未来へ!』~宇宙に向けた鍼灸~という壮大なもの。初日の「総合診療医に学ぶ!問診・視診のこつ」(岡山大学院・大塚文男教授)は、内分泌の視点から医療面接をとらえた話で、密度が濃くて分かりやすい講演だった。「副甲状腺の機能が亢進すると、骨が弱くなり、カルシウムが体にたまる。女性で尿路結石を繰り返す人や、口が渇く・吐き気・倦怠感・食欲不振などは副甲状腺機能亢進症による高カルシウム血症を疑う」、「35歳以下におこる高血圧は副腎の腫瘍によるアルドステロン症が多く、その4割が脳卒中をおこす」、「腹に赤い線が出る・中心性肥満・ムーンフェイスはステロイドホルモンが高い」など、我々鍼灸師も普段の問診から、これらのサインを見逃すことなく、的確な判断をしなくてはならないと感じた。 一般口演は腰と膝がテーマ。弦躋塾からは佐藤裕仁先生が、「突然起こった膝関節症」を発表された。日鍼会は主に現代医学的な診かたをするため、発表者も会場からの質問も解剖学的な話が多く、証や取穴、手技といったものは焦点にならないのがちょっと残念だったが、その反面、古典的な物の見方ばかりに偏ってはならないという刺激になった。
04日 10月 2013
前日の昼に五島を出発
9月28~29日の2日間、京都エミナースにて第41回日本伝統鍼灸学会が開催された。私は前日の昼に五島を出発、翌朝に神戸港経由で京都入りしたものの、会場までのアクセスが不便で時間をロスしてしまった。楽しみにしていた教育講演(長野仁・穴法図と経絡図のイコロジー)は半分しか聴講できず残念だったけど、その次の会長講演(形井秀一・世界の中の日本鍼灸)は、これからの日本鍼灸がどうなっていくのか、どうあるべきなのかを考えさせる内容だった。 形井先生は、東洋の医学と西洋の医学を歴史的に(特に中・韓・日を並列して)振りかえった。日本では19世紀の前半に出島経由で西洋医学が入り、1874年の「医制」で東洋医学が国の医学制度から外され、1911年には「鍼術灸術営業取締規則」が制定され、1947年に「あん摩、はり、きゅう、柔道整復等営業法が公布されて現在に至っている。新し物好きな日本人らしく、それまで培ってきた文化や医療技術などをあっさり捨て去ってしまったのが惜しい。「陰陽五行の惑溺を払わざれば窮理の道に入る可ならず」と批判した福沢諭吉に対して、「いい加減なものだ」と言い放つ家本誠一先生みたいな人は当時いなかったのだろうか。「20世紀の中頃から東洋医学が見直されてきたと言われるが、それは西洋医学が基礎・主体となる鍼灸が求められてきたわけであり、国民のほとんどが西洋医学を受けているという現実がある」と形井先生。これからは「西洋医学との統合と模索」をするのか、「独自性の模索」をするべきなのかと問いかける。同時に「これは中医学や現代医学とどのような関係にあるかという問題でもある」と述べた。 「このままでは日本の鍼灸はガラパゴス化する」という意見があるけど、だからといって日本の鍼灸が絶えて無くなるわけではないだろう。たとえガラパゴス化しようとも、日本の繊細な鍼灸が価値あるものであれば他国も放っておかないはずだ。なぜなら鍼灸を用いているどの国だって、「治せる鍼灸治療」を目指しているからである。そのうえ日本人は手先が器用だし、漢文だって返り点などを使って読めてしまう民族なのだ。古典を学ぶ上でも、他国の人に比べて圧倒的に有利な立場にいる。 とはいえ、現状的には中医学や韓医学に対する日医学は無いし、これからも期待できないだろう。むしろ期待なんかせずに、私たちは目の前にいる患者を治し続けることだ。「薬が使えないのは片手落ち」なんて言う先生もいるけど、むしろ薬を使わずとも治せる日本の鍼灸に誇りを持つべきだし、私のように人口の少ない僻地で細々と鍼灸院をやっていても、それなりの需要はあるものだ。もしも日本の鍼灸が絶えるとすれば、それは臨床家の技術が低下して、患者からそっぽを向かれた時だろう。情報化社会になったせいか、最近は理論ばかり知っていて技術の伴わない鍼灸師が増えていると聞く。また、高い金をかけて免許を取ったのに、挫折してしまう人も多いそうだ。もっとも、私が学んだ専門学校は西洋医学に偏っていて、ほとんど伝統的な鍼灸は学べなかった。今はどうか知らないが、実技では手指を消毒したうえに指サックをはめて刺鍼させたり、痩せて虚証の生徒にも寸6の3番をブスブス刺すような教え方をしていた。学校付属の施術所には「遠隔治療禁止」と張り紙がしてあったし、実際に臨床で必要な体表観察や脈診などは全く学べなかった。そんなことで卒業して臨床に向かっても患者が治せるわけがない。特に、「気の医学」としての技術を伝えてこなかった日本の鍼灸業界(教育機関)の責任は大きいと思う。形井先生は「世界の鍼灸と明確に共存できる関係を築きあげておくべきであろう」と言われたけど、そのためにも鍼灸界はまず足元をしっかり固め、治せる鍼灸師を増やすのが先決ではないかと感じた。
02日 10月 2013
講義をする首藤先生
首藤傳明先生...