カテゴリ:2014年5月


30日 5月 2014
会場は松山のひめぎんホール
2014年5月16日~18日の3日間、松山にて「第63回全日本鍼灸学会・愛媛大会」が開催された。テーマは「いのちの源をみつめる鍼灸~からだとこころの癒しを求めて」。今回は大分から弦躋塾の先生方と一緒に、佐賀関から早朝のフェリーで四国に向かった。...
29日 5月 2014
殿頂に刺鍼する首藤傳明先生
第160回弦躋塾の終了後、五島へは帰らずに大分に4日間滞在し、週末から愛媛で開催される全日本鍼灸学会に参加した。今回は10日間も仕事を休むので、そのぶん貪欲に勉強しなければという気持ちで過ごした。5月12日と13日の2日間は、首藤鍼灸院を見学させていただいた。私にとって8年ぶりのことであり、前夜は緊張であまり眠れなかった。どんな点に注視するべきか、何を質問するべきか、ビデオを撮る際に邪魔にならぬ間合いを保てるか、そんなことを考えながら先生のお宅へお邪魔した。
28日 5月 2014
第160回弦躋塾
2014年5月11日(日)、大分ソレイユにて第160回弦躋塾が開催された。午前中は首藤塾長の臨床講義「上肢痙攣」で、64歳男性の症例(両手指が過伸展して痙攣)や、『霊枢』経筋第十三や『明堂灸経』の記載などから筋肉の痙攣と痛みについて考察された。続いて「治療禁忌」や、次回に予定していた「腰痛」や「内臓疾患」まで講義が及び、非常に内容の濃い2時間となった。私が感じた要点をおさらいしてみる。 上肢痙攣の症例 患者から「手指の痛みと痙攣で仕事ができない」と電話があった際、首藤先生は頭の中でシュミレーションをしているが、それらは「上肢疾患」を診る際の重要なチェックポイントである。すなわち、 ・上肢や手指の使い過ぎはないか?  ・脈証は肝虚証か? ・局所や曲池・手三里に反応はあるか? ・背部兪穴の反応はあるか? ・鎖骨上窩の反応はあるか? ・右季肋部の圧痛はあるか? これらの予測に対して実際には以下のような結果がみられた。 ・10時間続けて魚をさばき続けたところ、両方の指が痙攣をおこした。 ・脈証は肝虚証だった。 ・異常を訴える指と周囲には反応が無く、第一掌骨基底部に圧痛と、合谷に張りがあった。肘関節では曲池に硬結と圧痛があり、手三里にも圧痛があった。 ・背部兪穴にはそれほど反応は無く、天宗に硬結と圧痛があった。 ・鎖骨上窩には(刺鍼していないので、おそらく)反応が無かった。 ・右季肋部に反応は無く、下腹部が虚していた。 首藤先生は下肢痙攣の際に環跳や小野寺氏点の刺鍼が著効することから、「上肢においては天宗が痙攣に対して即効があるのではないか」と予想し、実際に硬結と圧痛を得た天宗を重要な治療点としている。また問診によって血糖値が200であることや、腰痛があること、左の肩こりが特にひどいこと、「このままでは職を失うかもしれない」と、無茶をする割にはあわてていること等の情報が得られた。症状が労倦によるものであり、脈診では曲泉を指で軽擦して脈が好転したこと、腹証では腎虚があったことなどから、肝虚証と診断された。 治療順序は前後するが、本治法は曲泉・陰谷を超旋刺で補い、曲池・手三里・天宗には5ミリ刺入して雀啄を5回(曲池は10回)、灸を5壮(天宗は10壮)行なった。これが主訴に対するメインの治療である。また、糖尿病のために中脘・左梁門・脊中・左脾兪に浅置鍼をし、あとは力を抜いて膏肓・肝兪、志室(腰痛の場所)、肩井・風池に超旋刺を行なった。初回の治療に使用した経穴は14穴で、それらには肝の治療(本治法)、局所の治療、局所の補助的治療、糖尿病の治療、腰痛の治療の5つの意味が含まれている。 初回の治療後に痙攣が無くなり、2診目以降も同様の治療を行い、左肩凝りに大杼の刺入鍼や、圧痛の強い手三里に皮内鍼、肺兪・厥陰兪の硬結に灸を加えている。首藤先生は結論として、上肢痙攣には天宗を使う価値があることや、的確なポイント(圧痛・硬結)を見つけ出すことと述べられたが、決して局所の治療だけではなく、全体的な治療が加えられている点を見逃してはならないと感じた。 治療禁忌 鍼灸治療を続けても好転が見られなかった2症例(関節腫脹・頚肩のこりと痛み)に対し、どちらも他所で強刺激が加えられていたことが判明して、患者に指導をしたことが紹介された。鍼灸治療をしているのに、他所でも関節の腫脹に対して気持ちいいほどの揉捏を受けたり、自分で電気マッサージ器を使ったり、整体や療術を受けて悪化させるケースである。首藤先生は、特に頚部は絶対に揉まないこと、入浴や飲酒の禁止、整体などを禁止させ、「なぜいけないのか」を説明して、患者に納得してもらわなくてはならないと述べられた。 私の治療院でも腰痛で治療中の患者が悪化したことがある。話をよく聞くと、友人宅で「腰痛にいいから」と乗馬型の運動器具を何度も使用していた。そのときは楽になるのだが、ある朝痛みで動けなくなり、あろうことか本人は「鍼灸で悪くなったのかも」という疑いを持っていた。患者は良かれと思って色々と勝手なことをする場合がある。問診の際にしっかりとチェックして、不必要なことはさせないよう注意しなくてはならない。 その他、「腰痛」と「内臓疾患」についての講義感想は次の機会に述べます。